吟ぎんが
酒造り物語「酒米の開発から酒造りまで」
岩手の清酒の醸造技術は、南部藩の村井権兵衛によって、酒造業が営まれて、その醸造技術が付近の農家にひろめられたことにはじまりました。当時の酒造りは、農家の副業として行われ地域に広まったといわれます。
この南部流の酒造りは、国内でも非常に高度な技術で、その優秀さから隣領の伊達藩の酒屋からも競ってその技術者を雇い入れたといわれています。
この酒造りの技術は、日本最大の杜氏集団「南部杜氏」に受け継がれ、今なお、日本各地の蔵で活躍しています。
南部杜氏の里に酒米「吟ぎんが」
従来、岩手県は、吟醸酒に適したオリジナルの酒造好適米を持たず、他果から供給に頼ってきました。
このため岩手県では、清酒メーカーや杜氏の強い要請を受け、平成2年から農業研究センターで、岩手県オリジナル酒造好適米の開発に取り組んできました。平成8年に候補系統3種を選抜、同9年からは、最終選抜を目的に試験醸造を実施し、きわめて優秀な評価を得るに至りました。
このオリジナル酒造好適米は「吟ぎんが」と命名され、清酒の官能評価は、従来の本県産酒造好適米以上で「やわらかで豊かな新しい味わい」の清酒に仕上がり、岩手県の奨励品種にも編入しました。

岩手県工業技術センター
企画情報部長農学博士
齊藤博之先生
酒造好適米の特徴は大粒・心白といわれます。しかし大きいほど良いのではなく、適度な大きさや水の吸い易さ、適度な成分を必要とします。当センターでは酒造に優れた品種を選抜するために、その基準作りと醸造試験を行いました。この「酒造適性判定法」は、酒造研究に与えられる日本醸造協会、最高賞の伊藤保平賞を平成9年に受賞しましたが、「吟ぎんが」はこの厳しい基準をクリアした岩手県最優秀のトップランナーです。農家、醸造家、愛飲家にお勧めできる岩手が産んだ酒造好適米です。

岩手県農業研究センター
農産部水稲育種研究室長
畠山均先生
「吟ぎんが」は、岩手県の気象風土に適した吟醸酒向けの栽培しやすい品種として開発育成されたものです。
平成3年の交配後、腰痛に悩まされながら腰をかがめての選抜をくり返し、さらに工業技術センターや、酒造組合の協力を得ながら8年間を要して、やっと岩手県オリジナルのおいしいお酒が飲める様になりました。
「吟ぎんが」の作付けが定着し、岩手県の清酒のイメージアップと酒の消費拡大につながることを期待します。